採集語録

標本室を歩いていると、ときどき言葉が採集される。

名言ではない。
教訓でもない。

世界を観察している途中で、
名前のなかった現象に付いた仮のラベルである。

採集は、継続中。

  • 採集語録025「情報量異常」

    「情報量異常」

    出来事、思考、連想が次々と発生し、
    互いに接続しながら増殖していく状態。
    本人にとっては、
    ごく自然な速度で進行している。




    〈観察メモ〉
    一つひとつの情報に異常はない。
    異常なのは、その接続の仕方である。

    なお、睡眠中にも発生することがある。

    関連用語:勾玉現象

  • 採集語録024「たまらん星人」

    「たまらん星人」

    対象の魅力が一定値を超えると
    語彙が「たまらん」に収束する習性。
    自分ではどうしようもない
    多幸感に包まれたとき、

    「たまらん」としか言えなくなる。

    渦中にいるときよりも、
    その状態を観察している時の方が
    発生しやすい。



    〈観察メモ〉
    「たまらん」は
    幸せなときにかぎらない。
    散々傷ついて、落ち込んだ挙句、
    何かを掴んで戻ってきて一言、
    「……たまらんな」

    そのとき、たまらん星から
    たまらん星人が降臨する。

  • 採集語録023「いやしかし星人」

    「いやしかし星人」


    就寝直前、
    会話終了直後、
    一区切りついた瞬間など、

    思考が一段落したタイミングで、

    「いやしかし……」と
    新たな視点を持ち込み、
    話を再び転がし始める習性。


    〈観察メモ〉
    結論が出たようにみせかけて、
    「いやしかし」で再開する。
    考えが深まるというより、
    話が終わらない。

    感慨深いとき、
    新たな理解が生まれたときに
    いやしかし星から降臨する。

  • 採集語録022「無意識舞台魔」

    「無意識舞台魔」


    本人が意図しないまま、
    日常に舞台的な場面や伏線を発生させ、
    後日それが勝手に回収される人。



    〈観察メモ〉
    本人は普通に生きているつもりなのに、
    そこにいるだけで、
    なぜかドラマのワンシーンのような
    場面が立ち上がる。

  • 採集語録021「無意識露出魔」

    「無意識的露出魔」

    自分を表現するつもりはないのに、
    如実に見よう、如実に見せよう
    とするほど、
    意識しないまま、
    自分が露出してしまう人。


    〈観察メモ〉
    対象が如実になるほど、
    撮った人間まで、
    無意識に如実になる。

    隠したいわけではない。
    むしろ、ちょっと見てほしい。