春の満月。

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月はお山の裾野から上がり
辺りを照らし始めた

私はといえば
いてもたってもいられなくて

見ているか
そうでなければ
見ないようにするしかなかった

春の満月は
心をたいそう騒つかせる

大文字山とお月さま

鷹の訪問。

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まるでそこに設えた彫刻のように
ぴたりとそこに留まっている

その優美な姿に見惚れながら
私は話しかけた

「鷹さん、どうしてそこに?」
「善女龍王さまに世間の話をしにきたのさ」

鷹と善女龍王は相性がいいらしい

神泉苑にて

鶯の声。

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今朝は鶯の鳴き声で目がさめた
きっと隣の林から聞こえてきたのだろう

そうか、あそこには鶯がいたのか…
初めて春を迎える部屋で思う

辿々しい声が愛らしい

ぬるくなった湯たんぽを抱きしめながら
その鶯を抱いている気分になった

鶯よ明日も声を聞かせておくれ

季節の忘れ物。

 

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秋さん、お忘れ物ですよ〜
と秋に呼びかけたところで
秋は紅葉を迎えに戻って来たりはしない

とある旅館を訪ねた時のこと
その四角の中だけ
時が閉じ込められていた

聞けば襖にできてしまった
小さな穴を隠すために
庭の落ち葉を貼りつけたものだとか

それ以来同じ色でそこに留まっているそうな

小さな舞台。

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新月を三日ほど過ぎた日のこと

イモリのカップルが
浮かんでは沈み
近づいては離れ

それは楽しそうに戯れあっている

風が葉を鳴らす音や
微かに漂う春の匂い

 小さな池はさながら
スポットライトを浴びたステージのように
コロコロと色を変えた

二人をそっと引き立てるように…