秋のはじまり。

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©️ SATOKO NOGUCHI

夕暮れどき
駅の裏通りを
何とはなしに歩いていると

風の中に
懐かしい香りを見つけた

思わず立ち止まる

その香りに紐づけられた
色々を思い出すが

その色々はすぐに
消え去ってしまう

いつも秋を知らせてくれるのは

金木犀

夏の朝。

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©️ SATOKO NOGUCHI

夜明け前
残酷な夢から
半ば強制的に戻ってきた

シャワーを浴びて
涼しいうちにお参りへ

境内に入る頃には
すっかり辺りは明るくなり

槐の木がふうわりと
白い小さな花を咲かせていた

わたしはやっと安堵して
帰ったらもう一度
ベッドに入ろうと心に決めた

共演。

 

DSCF2581.jpg©️ SATOKO NOGUCHI

薄闇に大の字が灯ると
お月さまが
するりと肌を現した

うしろでは
ヨーヨー・マのチェロの音色が
ほのかに響いている

わたしの頬を撫でた
湿った風の袂には
秋の匂いが忍ばされていた

共鳴と静穏。

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©️ SATOKO NOGUCHI

蝉の合唱が
ダイナミックに共鳴する

山の中
突如ある空間に押し出された

そこだけはまるで異世界のように
静かで微細な空気に包まれている

堪らずその両足に触れると
ふっくらとした静穏が
優しく心を満たした

雨上がりの宵山。

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©️ SATOKO NOGUCHI

色々をため込んだ雨雲には
カミナリ様がおられたらしい

夕方には大きく暴れて
一気に街ごと浄化された

ひとときの静けさが
通り抜けたのちは

コンチキチンも
雑踏の賑わいも

軽妙に溶け合い
黒い夜空に消えてゆく