採集語録

標本室を歩いていると、ときどき言葉が採集される。

名言ではない。
教訓でもない。

世界を観察している途中で、
名前のなかった現象に付いた仮のラベルである。

採集は、継続中。

  • 採集語録005「如実夢」

    「如実夢」

    夢は現実を写さない。
    しかし、現実以上に如実なことがある。


    観察メモ
    夢を吉夢、凶夢、予知夢として
    分類する前に、
    まずは見たままを観察する。


    観察倫理〉
    ・夢をジャッジしない。
    ・夢を無理に一つの意味へ還元しない。
    ・観察と解釈は区別する。
    ・わからないものは、
     わからないまま標本箱に残しておく。

  • 採集語録 004 「露天読書」

    「露天読書」

    サウナと水風呂ののち、
    露天風呂でのととのい時間に、
    外気を浴びながら本を読む習性。

    観察メモ
    身体がほどけた状態で読む言葉は、
    頭だけで読む言葉とは、少し違う。

  • 採集語録 003 「振れ幅の化神」

    「振れ幅の化神」

    人格・行動・価値観・発言が、
    驚異的な振れ幅を持ちながら、
    内部では統一された論理を持つ存在。

    観察メモ
    外部から見ると矛盾に見える現象も、
    本人の文脈では一本の論理として、
    無矛盾に成立していることがある。

  • 採集語録 002 「刺繍とは如実である」

    「刺繍とは如実である」

    如実とは、
    見えるものも、見えないものも、
    どちらも如実である。

    刺繍は、見える糸だけで
    できているわけではない。

    布の裏を走る糸、
    結び目、
    表には現れない往復。

    見えないものを含めて、
    一枚の布は成り立っている。

    だから刺繍とは、如実である。

  • 採集語録 001「幽界漏れ」

    「幽界漏れ」

    意味が主体の内部に留まりきれず、
    偶然という形式を借りて
    顕界へ滲出する現象。


    観察メモ
    幽界で弄ばれていたものが、
    ふとした瞬間に顕界へ
    漏れ出ることがある。