©️ SATOKO NOGUCHI
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群青色の空
シルエットになった山の稜線に
圧倒的な存在感を放ちながら
昇ってくる
それを眺められるこの時間が
ものすごく愛おしい
もうとっくに空高く昇ってしまったが
私の心にはその時の余韻が
ずっと残っている
今宵の月は
本当に美しかったから
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群青色の空
シルエットになった山の稜線に
圧倒的な存在感を放ちながら
昇ってくる
それを眺められるこの時間が
ものすごく愛おしい
もうとっくに空高く昇ってしまったが
私の心にはその時の余韻が
ずっと残っている
今宵の月は
本当に美しかったから
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夕暮れどき
駅の裏通りを
何とはなしに歩いていると
風の中に
懐かしい香りを見つけた
思わず立ち止まる
その香りに紐づけられた
色々を思い出すが
その色々はすぐに
消え去ってしまう
いつも秋を知らせてくれるのは
金木犀
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どんなに暑くても
コーヒーはホット
と決めている
なんて強がりなことを言う
その必要も無くなった
消えゆく蝉の声に
耳を澄ませて
口に含んだコーヒーは
まだ夏の味がした
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しあわせが
喉を通る
桃バイツェン
箕面ビール
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夜明け前
残酷な夢から
半ば強制的に戻ってきた
シャワーを浴びて
涼しいうちにお参りへ
境内に入る頃には
すっかり辺りは明るくなり
槐の木がふうわりと
白い小さな花を咲かせていた
わたしはやっと安堵して
帰ったらもう一度
ベッドに入ろうと心に決めた
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薄闇に大の字が灯ると
お月さまが
するりと肌を現した
うしろでは
ヨーヨー・マのチェロの音色が
ほのかに響いている
わたしの頬を撫でた
湿った風の袂には
秋の匂いが忍ばされていた
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蝉の合唱が
ダイナミックに共鳴する
山の中
突如ある空間に押し出された
そこだけはまるで異世界のように
静かで微細な空気に包まれている
堪らずその両足に触れると
ふっくらとした静穏が
優しく心を満たした
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