©️ SATOKO NOGUCHI
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いつものヘアサロンのお向かいは
昔ながらの和菓子屋さん
予約時間が迫っているのに
「桜もち」の張り紙に目を奪われ
足はくるっとそちらを向いた
店内は桜の香りに満ちていて
それだけで幸せとなった
帰ってからそっと包みを開くと
可憐な香りとともに
しっとりとした桜もち
目を閉じて口に含む
広がってゆく世界
指に残った香りを聴きながら
今日もどこかで咲き始めた
ソメイヨシノに想いを馳せた
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いつものヘアサロンのお向かいは
昔ながらの和菓子屋さん
予約時間が迫っているのに
「桜もち」の張り紙に目を奪われ
足はくるっとそちらを向いた
店内は桜の香りに満ちていて
それだけで幸せとなった
帰ってからそっと包みを開くと
可憐な香りとともに
しっとりとした桜もち
目を閉じて口に含む
広がってゆく世界
指に残った香りを聴きながら
今日もどこかで咲き始めた
ソメイヨシノに想いを馳せた
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桜を見に行った帰り道
ふと右目の端に
何かを強烈に感じた
それは通り過ぎた私を
立ち止まらせるほどだった
自転車を降りて
その路地まで戻ると
古い町家の塀の上で
ミモザの大木が
生のきらめきを
謳歌している
その姿は
とても官能的であった
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冷たい風に吹かれて
自転車こいで会いに行った
水色の空に揺られて
オカメ桜は今年も咲いてた
心を澄ませて
呼吸を合わせると
桜の唄が
世界に響いた
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早朝の北野天満宮
誰もいない境内を散策していると
本殿前の飛梅という名のご神木を
一羽のヒヨドリが
独り占めしているのに出会った
ヒヨドリはたっぷりと時間をかけて
梅の枝を軽快に飛び回り
余程の喜びだったのであろう
雄叫びをあげて
天高く舞い上がっていった
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たったいま頭に浮かんだことが
次の瞬間には抜け落ちている
気をつけて
こころを結びつけておかないと
ややもすれば
私のものだと
信じているこの肉体は
私のものでは
なくなってしまいそう
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そもそもその肉体は
自身のものなのか
さくらは私に問いかけた
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