©SATOKO NOGUCHI
・
ひたすらまっすぐ落ちてくる雨の中
いつもの道を歩いていると
ビュンビュンという音と共に
数を数える声が聞こえてくる
近づいてみれば
少年がガレージで縄跳びをしていた
一飛びずつに
律儀に数をあてがって
さんじゅういち
さんじゅうに
さんじゅうさん
さんじゅうし
・
そういえばあの日も
こんな雨の日だった
遠くアラブの国を旅した私は
ひとつの家族と出会った屋根の下
言葉が通じなさすぎて
思わず日本語を口にすると
その響きが彼らの心をくすぐって
無邪気にけらけらと笑うのだった
いち
に
さん
し
ご
ろく
私は請われて何度でも数を数えた
それはなんだかとても愛おしい
幸福な時間だった
・