©SATOKO NOGUCHI
朝から家にこもりっきりで
心も体もどうしようもなくなったので
一走りして駅に行った
わたしは何かを期待していたのだろうか
人混みの中を歩くのも悪くないと呟いてみたり
立ち止まって人を待つふりをしてみたり
会えたのは美しい群青色に染まる空に
紅く光るキョウトタワーだった
朝から家にこもりっきりで
心も体もどうしようもなくなったので
一走りして駅に行った
わたしは何かを期待していたのだろうか
人混みの中を歩くのも悪くないと呟いてみたり
立ち止まって人を待つふりをしてみたり
会えたのは美しい群青色に染まる空に
紅く光るキョウトタワーだった
雨上がりは
少しだけ
少しだけ
少しだけ
先へと進む
虫の音が聴きたくてベランダへ出ると
キリッとしたハーフムーン
こんな夜は
香りのよい白ワインを開けて
夜風に当たっていたい
そこでわたしは歩みを止めて
見上げたけれど
そこには何もなかった
ただ宙があるだけだった
わたしを育んでくれた
北の大地に
また束の間
別れを告げて
台風一過の空を飛ぶ
いろんな思いが交差する時間
森では着々と秋が始まっている
・
ヨハン=ショトラウス二世
「ウィーンの森の物語」
このワルツの
特にチターの部分が始まると
なぜか北海道の景色を思い出す
その理由がわかった気がした
ビール片手に夕食の支度をしていると
西の小さな窓がとつぜん朱色に染まった
晩夏の燃える空が闇に吸い込まれていく様子を
静かに眺めていると
どこか近くで
つくつく法師が
秋の始まりを告げた
ここはどこ?
森をさまよっているうちに
妖精の世界に入ってしまったようだ
お行儀のいい妖精は
花から丁寧に愛おしそうに蜜を吸っている
私など存在しないかのように
・
私はここでは存在しないかのように