月別アーカイブ: 2月 2017
季節の忘れ物。
© SATOKO NOGUCHI
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秋さん、お忘れ物ですよ〜
と秋に呼びかけたところで
秋は紅葉を迎えに戻って来たりはしない
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とある旅館を訪ねた時のこと
その四角の中だけ
時が閉じ込められていた
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聞けば襖にできてしまった
小さな穴を隠すために
庭の落ち葉を貼りつけたものだとか
それ以来同じ色でそこに留まっているそうな
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小さな舞台。
©SATOKO NOGUCHI
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新月を三日ほど過ぎた日のこと
イモリのカップルが
浮かんでは沈み
近づいては離れ
それは楽しそうに戯れあっている
風が葉を鳴らす音や
微かに漂う春の匂い
小さな池はさながら
スポットライトを浴びたステージのように
コロコロと色を変えた
二人をそっと引き立てるように…
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朝の散歩。
©SATOKO NOGUCHI
境内に足を踏み入れると
冷んやりと研ぎ澄まされた空気の中に漂う
甘酸っぱい香りが
わたしの中を満たした
花の上に積もった雪の白と
花の放つ紅色が
お互いの存在感を
引き立てて混ざり合っている
わたしは心底満たされた
朝の散歩@北野天満宮
煙に包まれて。
©SATOKO NOGUCHI
上なのか下なのか
右なのか左なのか
明るいのか暗いのか
寒いのか暑いのか
一体わたしは何処にいるのだろう
煙の中にいると
山伏の背中がだけが道標
目で見えない方が
向こう側が鮮明に感じられる気がした
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上徳寺 世継地蔵尊功徳日大祭にて
節分の日に。
©SATOKO NOGUCHI
蒼く澄んでいた空に
薄灰色のベールがかかる
つぼみが綻んだ梅の花に
風が粉雪をさらりと運ぶ
髪飾りがさらさらと舞うのも
また春のようだと感じさせる
終わりと始まりの日に
北野天満宮にて
湯立神事。
©SATOKO NOGUCHI
お釜の前に進み出た神楽女は
神様にだけ意識を向けて
全てが生まれた時から備わっていたかのように
美しい型とともに儀式を進めていく
とにかく粛々と
口を真一文字に結んで
じっくりぐつぐつ煮立てた熱湯を
神様へ捧げたのち
参拝客に振りかける
その度に熱い熱いと歓声が沸いた
その後この神楽女による鈴のお祓いを受けながら
わたしはゾクゾクと震えた
鈴の音の波動から思い切り気配を感じて
身も心も魂も
こんなこと実は初めてだった