おじさんと犬。

102-NOG_3231

©SATOKO NOGUCHI

きっといつもそうしているのだろう

おじさんと犬は特に座る場所を探すでもなく
そこまでくると腰を下ろした

おじさんは海を眺めながら
犬は波の音に耳を傾けながら

ふたりの時間を楽しんでいるようだった

寒い日の漁港は
冷たい風がたくさん重ね着した服の間を通って
肌に刺さるようだったが

ふたりの素敵なシルエットは
束の間その感覚も忘れさせた

歓楽街と黒いレース。

12507652_941785612571654_4595477680145942683_n

©SATOKO NOGUCHI

ひとり夜の知らない土地で
雪になりそうな雨の中
お酒と夕食をとれるお店を探しに出た

沢山のネオンがビニール傘越しに
ぼんやりと重なって
歓楽街もこうやってみると美しいものだ
と思いながら歩いた

30分も経っただろうか
わたしはピンとくるお店と出会えずに
気づけば同じ道に戻ってきたことに気づく

見上げると
黒いレースがビルの壁を覆っている

わたしは何故かそれだけで
お腹が一杯になってしまい
缶ビールだけ買ってホテルに戻った

どう歩もうとも。

12469521_933733516710197_7144558090311730628_o

©SATOKO NOGUCHI

どこをどう選んでも
こんな感じなのかも

どんなに危うい道でも
前を向いて一歩一歩
進んでいくしかない

どんなに歩みが遅くても
止まってしまったり
引き返してしまっては
たどり着かないのだから

小樽運河のつるっつるの遊歩道を
よちよちと歩きながら
今の自分の状況と重ねて

いちいちそんなことを考えてしまう
自分に気づいて苦笑した