白い鳥からのメッセージ。

553-NOG_0108

©SATOKO NOGUCHI

夕暮れが近づく頃

私は自分が ”今ここ”にいるという不思議を
何とはなしに感じながら鴨川沿いを歩いていた

暫く歩いていると
白い鷺が淡い群青色に染まる水辺で
佇んでいるところに出くわした

私は鷺の美しさに気を取られ
土手に座ってしばらく静かに眺めていると
鷺は横を向いたまま

「行ったり来たしているのさ」

とだけメッセージを残して去ってしまった

行ったり来たり?
どことどこを?

………

あぁそうか
私はこういう曖昧が
大好きだったのだ

でももうそれも終わりにしなければ

年の瀬に鷺から受け取るとはなぁ

束の間ブローチ。

12370676_925351254215090_4488364562106136168_o

©SATOKO NOGUCHI

十一月も終わりのある日

京都御所を散策していると
私の背中にカマキリさんがくっついていました

一緒に歩いていた方が見つけて教えてくれたので
私は反射的にコートを払ってしまいました

ポロンと落ちたカマキリさんは
ずいぶん弱っているようで動きも鈍く
ハァハァと息使いが聞こえてくるかのようでした

そして、せっかく心地よい場所を見つけたのに…
と物欲し気にこちらを見上げているではありませんか

私もそんなカマキリさんの姿を見て
こんなに大人しいのなら
この紺の地味なコートを
その美しいエメラルドグリーンで
ブローチのように彩ってもらえばよかった…

とも思ったのですが気を悪くされたようで
戻って来てはくれませんでした

夢の中を歩く。

12370649_922786807804868_7807494939828007624_o

©SATOKO NOGUCHI

うららかな十二月のある日

落ち葉がまるで色とりどりの

花びらのように水面に浮かんでいた

春のような不思議な光景

静かな世界から外に出ると
街ではもうクリスマスのときめきに包まれている

巻いていたマフラーを外して
雑踏の中に入って行くことにしよう

仙洞御所にて