strolling 。

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©SATOKO NOGUCHI

昨日、異国からきた紳士に
“strolling” という言葉を教えてもらった

私たちは午後のひととき
鴨川でそれを楽しんだ

日が沈んで心地よい夜風を感じながら

お酒を飲んでいると
ある時すっかりその言葉が
抜け落ちてしまっていることに気がついた

私はメモ帳を取り出して
忘れたくないので
ここに書き留めておくれとせがんだ

“strolling=walking slowly and relaxed “

彼は左手にボールペンを持ち
滑らかな書体でこう書いて

忘れてしまったら
いつでもここに戻ってくればいい

と言って微笑んだ

画像

香りにからかわれる。

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©SATOKO NOGUCHI

季節の変わり目
すっかり体調を崩し
家に籠っていたところから

一日半ぶりに外に出て
霧雨の中を歩いた

いつもの散歩道をゆっくり散策していると
どこからともなくあの懐かしい香りが…

すっかり弱りきった私の嗅覚は
ブランデーの鼻をつく匂いも
シナモンの芳ばしさも
全く感受できなかったのに

辺りを念入りに見回すも
香りの主はなかなか見つからず

今年もまたからかわれている気分になり
もういいやと諦めて

ふと見上げると

そこに金木犀のベビィを見つけた

そのベビィが微笑んでいるように見えたのは
恐らく私だけでありましょう

血が燃えたぎるのをみた。

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©SATOKO NOGUCHI

岸和田のだんじり祭へ

お囃子の音と共に男たちの
囃し立てるドスのきいた声

この場にいることがそぐわない気がして
少々気おくれしながら場に馴染もうとしたが
途中で無理だと気がついた
岸和田人の血が燃えたぎる日

男たちは粋で猛々しくてかっこよく

そんな男たちの女であろう女たちからも
色っぽさと血の熱さを感じたのだった

九月の花火。

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©SATOKO NOGUCHI

最後の一本に火をつけて
夏を振り返ろうとしたが

夏は
「まだ終わってないよ」

と赤ん坊の寝息のような
風を吹かせて

最後の一粒をぎりぎり
落とさないでくれた

小さな火の玉がしぼんで
闇に溶けていくのを

息を潜めて見送る

線香花火の残り香で
余韻を楽しんだ

九月の花火はやっぱりどこか
センチメンタル

グレン・グールドと台風一過。

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©SATOKO NOGUCHI

大きく揺さぶられて目が覚めると
私はバスの後部座席に座っていた

あぁそうだった
京都に帰ってきたのだ

イヤホンを通して響いているのは
グレン・グールドのバッハ

どんな夢を見ていたのだろう

私は…
夢なんか見ていなかったのかもしれない

爽やかな空気に鈍い頭痛
軽やかな旋律に重い足取り

違和感を寝起きが悪かったせいにして

自宅でもう一度アルバムを聴きなおした