まるで今の自分。

DSC02762

©SATOKO NOGUCHI

緊張と弛緩の波が
寄せては引いて

私は知らずのうちに微睡んでいた

車に打ちつける雨音が
突然激しくなったかと思うと
あっという間にコンクリートの上には
幾層にも水が重なってゆく

薄目をあけて夢の世界から
ぼんやり移り行く景色を眺めていると
重なりあった水に浸かりながら
若々しい足がこちらに向かってくる

私の頭は
“足も革靴も気の毒に”
とまた夢の世界に戻ろうとしたが

その情景が頭から離れず

まるで今の自分のようではないかと
突きつけられた気がした

しかし彼女は
自分が気の毒だなんてちっとも感じず
この状況を楽しんでいるのかもしれないではないか

どんな表情をしているのか
とても見てみたくなったが
後ろの席に座っている私に向かって
彼女が振り向くことは一度も無いまま

気がつけばバスの中に
彼女の姿は消えていたのだった


コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

%s と連携中